尖閣諸島について

九州大学 法学部 勇和孝

 

1.はじめに

現在日中間での外交上の懸案となっている尖閣諸島問題について考えていきたいと思う。最悪のケース日中間での軍事衝突になりうるだけに、今ここで簡単にでも考えておくことは将来意義のあることだと思われる。

 

2.尖閣諸島とは

尖閣諸島(中国側:釣魚台諸島)とは沖縄県石垣島の北西170キロ(90海里)の東シナ海に浮かぶ数個の無人島からなる群島である。

一番大きいのが魚釣島(中国名:釣魚台)であり、周囲約11キロ、島内最高海抜は362メートルの規模を持つ。現在でこそ無人島であるが、飲み水が得られ、周辺海域がカツオの好漁場であったため、明治29年ごろから日本人資本家の手により開発が進められ、カツオ節製造工場などが建設されており、有人島であった。

このほか、魚釣島南東約5キロに、北小島、南小島、北西約27キロに九場島(中国名:黄尾)、同じく北西約110キロに大正島(中国名:赤尾嶼)の無人島が、尖閣諸島を構成している。

地理的位置としては、沖縄本島まで410キロ、中国本土までは330キロ、台湾までは170キロであり、日中中間線が中国よりの近隣海域に設定されている。

地質学的には沖縄本島などとの南西諸島とは違い、中国本土の大陸棚上に位置している。1969年に学術調査が行われ、この尖閣諸島周辺を含めた東シナ海全体に眠る石油は推定72億トンといわれており、欧州の北海油田に匹敵する。この石油を手に入れるための、排他的経済水域設定に大きくかかわる問題として、尖閣諸島の領有権問題が浮上している。

 

3.尖閣諸島領有権問題

先も触れたように、この尖閣諸島周辺海域には多くの採掘可能な地下資源がる。

排他的経済水域を設定することでこれらの地下資源を独占できるようになるわけため、日本、中国、台湾の間で国際的領土問題になっている。

 

4.日本外務省の見解

さて、この問題に対して、日本外務省はどのような見解を示しているか見てみよう。

「尖閣諸島は1885年以降政府が沖縄県当局を通ずる等の方法により、再三にわたり、現地調査を行い、単にこれが無人島あるのみならず、清国の支配が及んでいないことを慎重に確認したうえで、1895114日に現地に標杭を建設する旨の閣議決定を行い正式に日本領に編入するものとした。

18955月発行の下関条約第2条にもと基づき清国より割譲を受けた台湾及び澎湖諸島には含まれていない。

よって、サンフランシスコ平和条約第2条によって放棄した日本領には含まれず、第3条の南西諸島の1部としてアメリカ合衆国施政下に置かれ、沖縄返還条約(‘71,6,17署名)により、わが国に返還された、れっきとした日本領である。」

以上のような見解である。

 

5.歴史的事実の確認

この外務省見解を歴史的に確認してみよう。

1885年古賀辰四郎という実業家が、この島でカツオ節製造を始めたいため、沖縄県庁に尖閣諸島の土地を貸してくれるよう願い出た。

これに対し内務省が沖縄県庁に尖閣諸島に対する調査を命令。

当時の沖縄県令西村は清国側でもこの尖閣諸島を古来から航海の目標として知っているため、清国領の可能性もあるかもしれないむね、調査が必要と回答する。

これに対し政府は、清国との関係を不必要に悪化させたくないということで、内々に尖閣諸島を調査、清国の支配が及んでいないことを確認する。その後、1895114日、尖閣諸島に標杭をたてることを閣議決定し、ここに公的に日本領としての尖閣諸島が誕生したといってよい。

標杭が立てられるまでの10年間に、古賀氏は尖閣諸島で事業を開始、実効的に支配する。

国際的に国家がある地域を新たに自己の領域とする場合、まず、領有の意思を持つことが必要、そして、その地域を実効的に支配することが必要である。この考え方は、無主地の場合はもとより、係争状態にある場合も。この実効支配が決め手となる。

それを考える際、尖閣諸島は無主地に近い状態であり、日本人が実効的支配を行っていたことより、日本領と主張するのは,至極妥当なことであると思う。

よって、中国側の、導入部で触れた「日清戦争敗北による下関条約で、台湾の一部として日本に割譲した」という見解は誤りである。

尖閣諸島は清国領でなかったから割譲できないし、日本側は割譲以前に尖閣諸島を領有したからだ。それに、台湾の一部でもない。

第一、中国側が領有権を主張しだしたのは石油資源の存在がわかってからのことであり、当時は尖閣諸島を日本領とみなしていたからだ。

その証拠を、いくつか挙げてゆく。

1920年、中国の漁民30名が、遭難して魚釣島に漂着する事故が起こった。

これを石垣村(現沖縄県石垣市)の玉代勢孫伴氏が手厚く看護し漁民は無事中国に生還することができた。

この日本側の措置に対し、中国(当時中華民国)側は感激し、中華民国駐長崎領事の名で、氏に対し感謝状(石垣市市役所に現存)が送られたが、その中に以下のような言葉が見られる。

「日本帝国八重山郡尖閣諸島」

つまり、当時中国側は尖閣諸島を日本領と認識していたのである。

また、ほかにもある。

サンフランシスコ平和条約締結時、中国は連合国であったから尖閣諸島については領有権を主張すれば認められたはずである。しかし、領有の意思を見せることはなかった。自国領という認識がなかったからであろう。

1955年には、台湾当局が尖閣諸島を沖縄諸島の一部であると明記した公文書を発行した。そのほか、中国側で発行された地図でも、「尖閣諸島」という表記で日本領と表されており、1970年発行の中国の中学校の地理で使われる地図帳にもそのような表記がなされている。国定教科書の記述は政府見解としてよいはずだ。

また、沖縄返還まで大正島などは米軍の射撃場として使用されていた。もし、当時中国側に領有の意思があれば米国に抗議していただろうが、なんら抗議はなかった.さらに、米国は日本とこの使用に対し賃貸契約を結んでいた。国際的にも日本領と認められていたといっていいだろう。

最後に、李登輝前台湾総統が「尖閣諸島は日本の領土」(2002,9,16)と発言したことも付け加えておく。

 

6.日中、もし戦わば

以上のように、尖閣諸島の領有権に関しては、日本側に正当性がある。多分、石油資源の存在の可能性がなければそのまま日本領だったのだろう。中国側は、地下資源の埋蔵がわかってから急に領有権を主張しだしており、その論は強引且つ詭弁に等しい。あまりにも、矛盾が多い。石油資源を狙う野心が丸見えである。

さて、以上のような理由から尖閣諸島は日本領である。私はそう断言する。

ところが、断言したらしたでいろいろと困ったことが出てくる。

尖閣諸島が日本領であれば、日本政府に領土保全の義務が出る。

中国側は尖閣諸島に領有の意思を明確に持っている。1992年中国領海法において領有権を明文化し、12海里以内に近づいた外国船を軍事力で排除することも 可能とも、明文化した。つまり中国側が、軍事力を持って尖閣諸島及びその周辺海域について実効的支配を行う可能性を否定できないわけだ。軍事力を持ち出さないまでも、資源調査船を派遣した後油田を勝手に作る事態も十二分に考えられる。それを排除しようとすれば軍事衝突につながる恐れがある。

実効支配をしようとする中国側に対し、日本側はどこまで対応できるだろうか。

頼みの日米安保も今回は大量の石油が関係しているゆえ、どこまで有効かわからない。むしろ、石油メジャーは中国側の油田開発には賛成しているという。それを考えた際、安保もあまり役に立たないだろう。アメリカは中立化し、日本独自で防衛する必要に迫られる。

日中、もし戦わば、果たしてどうなるか。日本に勝機はあるのか。

戦争に勝つとはどのような状況か。現代は国家対国家の戦争を行う。降伏するのは軍隊ではなく国家になっている。

日本が、中国を降伏させる事態はどうか。有り得ない。1億が10億を支配するのは無理だ。第一、日本に侵略統治を行える戦力はない。あったら違憲状態だ。

では、中国が日本を降伏させる事態はあるのか。これもかなり微妙である。日本本土に攻撃を加えればさすがにアメリカが黙っていないだろう。中国もアメリカを敵に回して戦争を行うのは自殺行為に近い。

戦争が行われるにしろ、日中全面戦争になると、そのコストはあまりにも大きくなる。特に、両国の距離は近いため、日本本土に攻撃が加わればアメリカも参戦するだろうから、民間に多数の被害が出る可能性がある。せっかく油田を得ても利益にならない。

もっと現実的に考えれば、尖閣諸島周辺海域で、局地戦が起こり、その結果中国側が実効支配をするという状況が一番考えられうる。

日本には憲法9条があり、自衛隊の派遣からして大きな混乱が起こるのは必至である。混乱の中時間だけが過ぎていく恐れがある。

アメリカも、石油という地下資源がかかわっている以上、石油メジャーの意向を汲んで何一つ動けない可能性が高い。

つまり、日本とアメリカは動けない状態になる可能性がある。中国との関係や、国内世論、国家防衛を考えた際、中国が軍事力を持って実効支配をしようとしたときに何をとるか何を斬るかで、国内大混乱になり判断が下せない可能性、これは否定できないと思う。そして、中国が歴史的には何の正当性もないのに強硬に尖閣諸島の領有権を主張するのもこのような事態になることを読んでではないかと思われる。

 

7.尖閣諸島の明日

尖閣諸島は日本に正当な領有権がある。しかし、それを実効支配できる力はむしろ中国にあるのかもしれない。

日本は、尖閣諸島問題に関して、領有権を主張して石油資源を獲得しようとするにせよ、中国側に譲歩するにせよ、どちらともリスクが大きい。何をしようとするにせよ、日本側が行動するにはなんらかのリスクがついて回ってしまう。

日本にとってこの問題を解決するには、それも、日本にリスクのない方法でおこなうには、どうしたらよいのだろうか。

ある意味八方塞のこの状況を解決するにはいささか奇策と呼ばれるような策でも立てなければ無理だろう。

ということで、私は「脱石油化社会の確立」を訴えたい。

なぜ、尖閣諸島の領有権が争われているのか。なぜ、中国側は1970年以降に領有権を主張するようになったか。

答えは、「石油が欲しい。」の一点に尽きる。石油に価値があって、石油が莫大な富を国にもたらすからこそ、争われる。

ならば、石油の価値を無くしてしまえばよい。

価値のないものをめぐって争う、しかも命をかけて、そのようなことができるほど人間は愚かでないと私は信じている。

もし石油に価値がなくなれば、当然尖閣諸島は昔のように東シナ海に浮かぶ無人島として平和な日々が訪れる。

脱石油化社会については、いろいろと困難はあるだろうが、決して無理ではないし、むしろ、日本の国益になると信じている。今回は尖閣諸島問題についてのレポートなので脱石油化社会に関しての説明は省略させていただくが、このような大きなパラダイムの変換を行わないと、日本が平和に、そして世界が平和になることは困難であろう。

この世界、石油が金に変わる液体である以上、石油資源をめぐってと思われる戦争はまだまだ続いている。そして、わが国、日本もその戦いに巻き込まれる可能性がある。

「戦わずして勝つ。」孫子の有名な言葉である。

戦わない、そのために全力を尽くす。国を挙げて代替石油エネルギーの開発に取り組み、石油をエネルギーとして消費しないで済む社会の構築こそが、実は、回り道で、関係ないように見えても、この泥沼と化しつつある尖閣諸島領有権問題の一番の解決策であるのではないかと思う。

「急がば回れ。」古人はこのようにも言っていた。